

こんにちは、mr-chickenです。
宅建業法の 8種制限の一つである「クーリングオフ」について解説します。宅建業法では買主を保護するため、原則として買主は申込みの撤回や契約の解除ができるとしています。これがクーリングオフです。
ただし、クーリングオフが適用されない例外が存在しますので、しっかりと押さえておきましょう。
1. 8種制限の概要
1-1. 8種制限って何?
宅建業法に規定されている 8種制限がどのようなものか知っていますか。宅建業法の勉強が進んでいる方は、当然の内容かもしれません。念のため、おさらいを兼ねて紹介します。
8種制限が登場するのは、売買契約の際に売主が宅建業者で、買主が一般のお客さんだった場合の話になります。取引のプロである宅建業者と取引の素人であるお客さんとでは、宅建業者に有利な契約となる可能性があります。そのように弱い立場であるお客さんを保護するという観点から、宅建業法には特別な 8種類の規制が設けられています。これが 8種制限になります。
1-2. 8種制限が適用される場面
では、どのような場面で8種制限が適用されるのでしょうか。全ての取引に適用されるわけではありません。
8種制限は、宅建業者が売主、かつ、買主が宅建業者以外のお客さんの場合の取引に適用されます。売主が宅建業者でも、買主が宅建業者であった場合に、その取引には適用されません。
2. クーリングオフとは?
2-1. クーリングオフ制度
宅建業法では、下記の通りクーリングオフ制度を認めています。
宅地建物取引業法
(事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)
出典:デジタル庁「e-Gov法令検索サイト」-「宅地建物取引業法」(出典元)
第三十七条の二宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
一買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき。
二申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき。
2申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。
3申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
4前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。
このように、宅建業者が自ら売主となる場合に、「事務所等以外」の場所で行われた買受けの申込みや売買契約は、申込みの撤回又は売買契約の解除ができると定められています。
2-2. クーリングオフ制度の事務所等とは?
宅建業法におけるクーリングオフは、事務所等以外の場所で行われた買受けの申込みや売買契約に適用されますが、その「事務所等」とは何を指すのでしょうか。
こちらは、宅建業業者の事務所や案内所が含まれます。もし、買受けの申込みの場所と契約の場所が異なる場合は、「申込みをした場所」で判断します。
なお、この「事務所等」の細かい内容については、クーリングオフの適用がない事務所等として、後述します。
2-3. クーリングオフの効果
クーリングオフは書面により行う必要があります。こちらは、発信主義となっており、買主がその書面を発した時に効果が生じます。
この書面による申込みの撤回等の意思表示により、契約関係はなかったことになります。宅建業者が受領していた手付金等は返還しなければならず、原状回復義務が生じます。
なお、クーリングオフにより契約解除となった場合において、宅建業者は損害賠償又は違約金の支払を請求することができません。
さらに、申込者等に不利となる特約の定めは無効となります。
3. クーリングオフ適用の例外
3-1. クーリングオフが適用されない場合
クーリングオフが適用されない場合は、3つあります。
- 「事務所等」で買受けの申込みや売買契約を行った場合
- 履行が終了した場合
売主が物件を引渡し、かつ、買主が代金を全額支払った場合には、履行が終了しているため、契約の解除等はできません。 - 8日間経過した場合
宅建業者がクーリングオフができる旨を告げた日から8日間経過した場合は、クーリングオフが適用されません。宅建業者は書面で告げる必要があります。口頭で告げた場合は、8日間の期間が始まらないということになります。
3-2. クーリングオフの適用がない事務所等
前項で「事務所等」で買受けの申込みや売買契約を行った場合にクーリングオフが適用されないと述べましたが、クーリングオフの適用がない「事務所等」とは、どのような場所になるのでしょうか。
- 自ら売主となる宅建業者の事務所
- 宅建業者が他の宅建業者に、代理・媒介を依頼した場合の代理・媒介の依頼を受けた宅建業者の事務所
- 買主がその自宅または勤務する場所で、宅建業者に売買契約の説明を受ける旨を申し出た場合の、その買主の自宅または勤務する場所
- 宅建業者の事務所以外で継続的に業務を行うことができる施設
- 宅建業者が一団の宅地・建物の分譲を案内所を設置して行う場合において、その案内所(土地に定着する場合に限る)
- 宅建業者が他の宅建業者に、代理・媒介を依頼した場合の代理・媒介の依頼を受けた宅建業者の事務所以外の場所で継続的に業務を行うことができる施設
- 宅建業者が他の宅建業者に、一団の宅地・建物の分譲の代理・媒介を依頼した場合の代理・媒介の依頼を受けた宅建業者がその代理・媒介を案内所を設置して行う場合において、その案内所(土地に定着する場合に限る)
- 宅建業者が成年者である専任の宅建士を置くべき場所(土地に定着する場合に限る)で宅地・建物の売買契約に関する説明をした後、展示会等の催しを土地に定着する建物内で実施する場合の催しを実施する場所
案内所について、「土地に定着する場合に限る」となっていますので、テント張りの案内所など土地に定着していない案内所では、クーリングオフの適用対象となります。
4. まとめ
最後までお読みいただきありがとうございました。
「クーリングオフ」問題の解法のポイントは、「場所」、「履行」、「時期」について、クーリングオフが適用される場合を考え、「方法」や「効果」についても併せて確認することです。
「場所」:事務所等以外であること・申込みをした場所が基準
「履行」:引渡しと代金全額支払いが行われていない
「時期」:書面で告げられてから8日間経過していない
「方法」:買主が書面で申込みの撤回等を行う必要がある
「効果」:手付金等は返還しなければならない・損害賠償等の請求はできない
これらを確認して、クーリングオフができるかどうかを考えると問題が解けると思います。上記で挙げた各項目の内容が前提知識として必要となりますので、しっかりと把握しておくことが重要です。